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バンリと千紗に履歴書バトン + ある雪の夜の話 [小説 : Dolly Shadow]

イラスト原画/桜井嬢
 
 そう、俺たちのことも少し話しておこうか。
 俺とバンリは、所謂幼なじみでね。子供の頃は『バンリ』『チサ』と呼び合う仲だった。
 重役の息子と、単なる平社員の息子。
 身分の違いはあったが、子供には、そんなの関係なかったからな。
 と言っても、そう思っていたのは俺だけで…… バンリの方は、大人達から随分と圧力を加えられていたようだ。後で知ったことだが。
 バンリがあんな『良い子』になっちまったのは、もしかしたら、そのせいかもしれないな。
 やがて、十代の半ば位で、俺は重役への道に押し上げられ……
 バンリは、俺から引き離されて、物騒な企業間抗争の真っ只中に放り込まれた。
 その頃から、だったかな。
 バンリが俺を、『千紗さん』と、呼ぶようになったのは……
  
 

 
 
■ まひろさんから履歴書バトンを回していただきました。
指定はなかったので、新キャラのバンリで回答させていただきます。わーい、このバトンやってみたかったのですごい嬉しいです♪
せっかくなので、千紗の履歴書も書いてみました^^
手書きは出来ないので、フォント文字ですが…… う、うん、きっとバンリも千紗も字は綺麗なはずだから問題なし!
(……いや、千紗はけっこう書き殴るような字書くかもしれないなぁ……)
そんなわけで、↓新キャラ二人の履歴書です。
 
 
【履歴書バトン】
・このバトンは自分の子の履歴書(?)を明記するバトンです。
・当バトンを受け取った方は回答を強制されません。ご好意で回答ください。
 
履歴書バトン_バンリ.jpg


■ 履歴書としては正しくないのですが、キャラ口調で回答させてみました。
このバトン、キャラの性格を考えるのにいいですね。楽しかったです♪
写真部分は、相方桜井嬢画です。
ラヴォ耳は無理ーと言われたので、仕事中はムシチョウに変身してるって設定にしちゃいました^^;
でも、逆に「仕事の時は甘くないのです」みたいな感じがしていいかなーと思ったり。
前髪は決まった形じゃなくて、その日の気分で色々変えてる感じです。真っ直ぐ垂らしてみたり、ちょっと分け目付けてみたり、横に流してみたり。けっこうお洒落が好きな子なのです^^
(髪の色はダークグレーな感じのイメージです。黒に近いけど、ちょっと灰色)
バンリからは、まひろさんとトリコさんとコバヤさんにバトン回させていただきます。もしお時間ありましたら、お願いします~!
続いて、千紗の履歴書。

履歴書バトン_千紗.jpg


■ 千紗の方も、写真部分は相方桜井嬢画です。
千紗はふわふわで背中まであるブロンドの髪が特徴ですが、これもたまにはちょっと後ろで括ってみたり、後ろでひとつに束ねたりしてたらいいなーと^^
長髪キャラの後ろひとつ束ねって萌えるんだ……!(趣味自重しないミズリ)
ちなみに、ムシチョウとの混血なのは、最初はフェレルじゃなくてムシチョウの予定だったから……^^;
千紗からは、りやこさんと恵凛さんと幽さんにバトン回させていただきます。お時間ありましたらお願いします。
わーい、回答楽しかったです。ありがとうございました!

▼履歴書ダウンロード
http://yumenouchi.kakurezato.com/rirekisyo.html


■ 以下、また何のフォローもなく小話が始まって終わってます。
前のバンリの小話の、千紗視点verです。
 
 


 
 
 
 
 
 
『全国のリヴリーの皆さん、Welcome to KissLivlyスタジオ! ホントにっ、今夜はとっても寒いですね。今にも雪でも降りそうです。それとも、もう降ってるところもあるのかなっ?』

 ラジオから流れる声が、そう問いかける。
 上着を脱ぐ手を止め、千紗はふと窓の外を見た。
 大きな窓はまるで映画のスクリーンのように、夜の景色を映し出す。高層マンションの、最上階に近い一室。都会のネオンは遙か遠く、キラキラとビーズ細工のように光を放っている。
 世俗の汚れも届かない、清浄な夜空。
 その中を、何か、白いものが舞っている。 
 濃紺のグラデーションの中をひらひらと舞い降りる、白のドット。スクリーンセイバーの花びらは桜色だけど、それを真っ白に染めたら、こんな感じになるのだろうか。
「……雪、か……」
 溜息を含みながら、千紗は独り呟いた。
 窓に背を向け、脱ぎかけの上着から腕を引き抜く。長いブロンドの髪がスーツの上を滑り、白いワイシャツの肩ににさらりと零れた。
 ネクタイの結び目を、無造作に指で押し下げる。
 脱いだ上着を背もたれに放り出すと、千紗はどさりとソファーに沈み込んだ。
 開いた唇から、また溜息が洩れる。 
 ……疲れた。
 緊張の糸が切れると、代わりに押し寄せて来るのは、沈み込みそうな程の眠気。このまま目を閉じたら、朝まで眠ってしまいそうだ。
 窓の外には、今も雪が降っているらしい。
 だけど、上等の窓ガラスはとても厚く、外の空気の冷たさも、雪がガラスを撫でる音も伝えてはくれない。
 カーテンでも引いてしまえば、雪が降っていることすらわからなくなるだろう。
 多少積もっても、車さえ動けば別にいい。その車だって、自分が運転するわけではないのだから。
「………ん……」
 額に零れる髪を掻き上げ、千紗は気怠く身を起こした。
 駄目だ。
 こんな所で寝たら、風邪をひく。
 シャワーでも浴びて、少し頭をハッキリさせようか。寝る前に、やっておかなければいけないことがあるのだから。
 だが、その前に……
 千紗はソファーから腰を上げると、キャビネットからグラスとボトルを取り上げた。そして、またどさっとソファーに座り込む。
 クリスタルのグラスに琥珀色のウィスキーを注げば、ふわりと鼻腔をくすぐるシェリーの香り。
 背もたれに身を沈めながら、千紗はグラスを傾けた。
 ラジオからは、何か甘ったるい歌声が流れている。知っている歌だ。だが、それはあくまで知識であって、別に心に響くわけじゃない。
 甘い歌なんかよりも、自分には、こっちの方がいい。
 とろりと喉を過ぎる琥珀色は、甘い香りを微かに残して消えていく。
 満足げに吐息を洩らして、千紗は重い瞼を伏せた。
「……疲れ…た……」

『こんな日は何だか人恋しくなってしまう、そんなアナタに贈る一曲! 心の中までぽっかぽかになってしまうような、そんな甘~いラブソングです。アナタも、大切な人を想いながら聞いて下さいね。その人もきっと、今頃アナタのことを想っているから……』

 次々とラジオから流れ出す歌声は、どれもこれも、聞いたことのあるものばかりだ。
 新鮮な喜びなど、ここにはありはしない。
 止めてしまおうかとも思ったが、立ち上がってそれをするのも面倒だ。それよりも、ただ聞き流しながらでも、グラスを傾けている方がいい。
 千紗は、ぼんやりと窓を見た。
 雪はますます酷くなって、遠くの夜景も霞んでしまっている。ここにいると想像も付かないけれど、外はきっと凍えそうに寒いのだろう。
 こんな、寒い雪の夜に……
 アイツは、今頃、どうしているだろうか。
「……………」
 グラスを傾ける手を止め、千紗はテーブルの上に目を落とした。
 無造作に置かれた、最新モデルの携帯電話。まるで出番を待っているように、持ち主の顔をその表面に映している。
 バンリに、電話しなければいけない。
 こんな寒い雪の夜に、電話しなければいけない。
 目を閉じて思い出せば、その顔が鮮やかに浮かんでくる。まるで、すぐ側にいるかのように。
 どこか幼さの残る女顔に、フレームレスの眼鏡。いつもどこか物悲しそうな顔をして、切なそうに俺を見上げる、あの褐色の瞳。
 濃い灰色の髪から突き出したラヴォクスの耳は、本人にとっては恥ずかしいものらしい。よくムシチョウに変化して隠しているけれど、けしからんことだと思う。俺としては、あの可愛いラヴォ耳が気に入っているのだから……
「………クッ……」
 口の端を吊り上げ、千紗は独り小さく笑った。
 おいおい、何を考えている。
 これは『仕事』だというのに。
 自分はまた、彼を戦わせなければいけない。こんな寒い雪の夜に、眠ることすら許さずに。
 ただ愛すべき旧友の声を聞き、他愛もない話に花を咲かせることが出来たら…… どんなに、良いだろう。
 いや。
 そんな機会は、いくらでもあったはずだ。
 だが、ただ自分がそれをしなかっただけ。日々の忙しさと疲れを理由に、気持ちを押し殺して来ただけ。
 声を、聞きたかった。
 今すぐにでも会って、抱きしめてやりたかった、けれど。
 そうしてしまったら、きっと、張り詰めていた何かが、ぷつんと途切れてしまうだろう。
 バンリの中でも。自分の中でも。
 だから。
「……バンリ……」
 唇から零れる、その名前。
 ぐいとグラスを傾けると、千紗はそれをテーブルに置いた。そして、代わりに携帯電話を取り上げる。
 そう。
 これは、仕事だ。
 だけど、少しくらいは…… 私情を挟んでも、いいだろう?
 声を聞いて、少し他愛もない話をして。淋しがっていたのなら、慰めてやってもいい。アイツは、昔から淋しがり屋だから。
 千紗さん。千紗さん。
 嬉しそうに呼ぶ、あの心地良い声を…… この耳一杯に、満たして。
 それから。
 そう。つまらない仕事の話をするのは、それからでいい。
「さて……」
 緩んだネクタイを解きながら、千紗はゆったりとクッションに身を沈めた。
 手慣れた仕草で携帯をいじり、そのまま耳に当てる。
 呼び出し音の向こうに、慌てたように駆け寄る足音が聞こえた気がした。そんなはずはないと思いつつ、その様子を思い浮かべて、つい頬が緩んでしまう。
「どうせなら、楽しませてくれ…… バンリ……?」
 ニヤリと笑みを浮かべて、千紗は電話の向こうへ囁く。
 呼び出し音がぶつっと途切れる。
 そして、少し躊躇うような間の後、どこか掠れた声が聞こえてきた。
『っ、はい…… バンリです』
 
 
 


                        To be continued.
 
 
 
タグ:千紗 バンリ

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