DollyShadow New Arrival "Nicolas" [小説 : Dolly Shadow]
■ 先日9月1日、DollyShadow組にオルフのニコラス(ニコ)が加わりました。
ニコが経営するカフェ『Cafe Canonicate』での、旧友クゼ神父とのささやかなお茶会模様です。
(まひろさん宅の鈴影先生のことを話題に出させていただきました。お誕生日おめでとうございます、先生^^)
【設定イラスト/桜井嬢】
「……ねぇ、ニコ」
小さな覚悟を決めて、私は顔を上げた。
ミルクティの優しい香りが、目の前のカップからほんのりと立ち上っている。そんな、午後10時過ぎ。
閉店後のカフェで、私は遅いお茶の時間を過していた。
ここは、『Cafe Canonicate』。
私の古い友人である、ニコラスが営む店。
すっかり私の定位置になったカウンター席の片隅には、私専用であることを示すかのように、白百合の刺繍入りのランチョンマットが敷かれていた。
真っ白なティーカップには、アールグレイのミルクティ。
添えられた木の葉型の小皿には、小さなリーフパイ。紅茶や珈琲に必ず添えられる、店主の心遣いだ。
木のカウンターの上には、グラスに飾られた素朴な花。
その向こうで、この店の店主は―――― ニコは、グラスを拭く手を止める。
「ん?」
くるりと、ニコは振り返った。
その背中で大きく揺れる、市松模様の尻尾。少し珍しいそれは、オルフ種特有のものだ。
まるで狼のような、ぼさぼさとした髪。
そのカフェオレのような色の髪の上で、十字に止められたヘアピンがキラリと光る。
子供っぽいなと、私は思った。
いつからそんな物を付けるようになったのだろう。私が知っている頃のニコは、そんなもの付けていなかったというのに。
「んー? なに、ナオ。そんな神妙な顔しちゃってさ」
声を掛けたものの口を開かない私に、ニコはニッと笑みを浮かべた。
クゼ神父と呼ばれる私を『ナオ』などと呼ぶのは、今となっては、ニコただ一人だ。
まるで茶化すような、戯けた笑い顔。
思わず、私は自分の頬をぺたりと触ってしまう。
「う、うん…… そんな顔をしているかい、私は……」
「あはは、冗談だって。全くもう、ナオちゃんってば」
その笑顔を少しほろ苦くしつつ、ニコはグラスの乗ったトレイごとカウンターの方へ近付いて来る。
全くもう、とはどういうことだろうか。
そう言えば、彼は昔からそういうことをよく言っていたような気がする。意味はさっぱりわからなかったけれど。
だが、何やら馬鹿にされたような気がして、私は少し睨んでやった。
ごめんごめんと、苦笑するニコ。
たくさんのグラスが乗ったトレイを、彼はカウンターの上にそっと置く。
「でも、ナオが俺に『ねぇ』なんて言うのって珍しいなって思ってさ。どしたの? 何か困り事?」
「いや、困り事という程ではないけれど…… 少々、君に聞いてみたいことがあってね……」
何とか躊躇いを押し殺しながらながら、私は口を開いた。
それは、私にとっては、胸の奥に秘めておくべきこと。とても他人に相談出来るようなことではない。
でも。
この男ならば…… 話してもいいかと、思ったのだ。
言葉巧みに私を騙して秘密を聞き出してしまった、調子の良いこの男。
私が恋をしていることを知っている、彼、ならば。
「……例えば…… 例えばだ、ニコ」
カップの中で揺れている、優しい味の紅茶。
その白茶色に目を落としたまま、私はぼそぼそと尋ねた。
「もしも、君がその、誕生日を迎えたとしてだよ。そして、もしも友人から贈り物をもらったとしたら…… 君なら、どんなものなら嬉しいと思うかい?」
「……贈り物?」
ぱち、ぱち。
垂れ気味の目が、わざとらしく瞬きをする。
私の言った意味を計りかねていたのか、ニコはしばらく驚いたような顔で私を見ていた。
だがふと、その唇がニッと吊り上がる。
「ナオ…… お前ってヤツは……」
「……うん?」
何やら、不穏な気配。
思わず顔を上げた私に何やら意味ありげな目線を送ってくると、ニコは、その笑い顔をデレッと崩した。
「やだなぁ、ビックリしたよ、もう。ナオってば、俺の誕生日知ってたの?」
「…………。は?」
「やー、そうなんだよね。実は俺、こないだ9月1日に誕生日だったんだ。もう、そんな贈り物なんか気にしなくていいのになぁ」
「君の誕生日など聞いてはいないよ。例えと言っただろう、例えと」
ヘラヘラする男に苛立ちを覚えつつ、私は正直に言い放つ。
ぐさっ。
そんな幻聴がニコから聞こえた気がした。まるで『痛みの矢』が刺さったかのように。
「……ナ、ナオってさ、俺には変わらず厳しいよね。優しい神父様になってくれたんだなぁって、思ってたんだけどなー」
「君が真面目に答えないからだろう、ニコ。私は、君ならばと思って尋ねたというのに」
涙目笑いのニコから、私はふいっと顔を背けた。
何だかからかわれたような気がして…… 首の付け根のあたりが、少し熱い。
「あはは、そうだったんだ。ごめんごめん」
またグラスに手を伸ばしながら、ニコは相変わらずの軽さで笑った。
白い布巾が、透明なグラスを磨き始める。きゅっきゅっと、快い音を立てながら。
「でも、うん…… そうか、誕生日の贈り物ね…… 確かに、神父様にはちょっと難題かもしれないなぁ」
カーテンを引いた窓の方を見遣って、ニコは独り言のように呟いた。
そしてふと私に目を戻すと、彼はその褐色の目をニッと細める。
「なになに、もうすぐ誕生日なの? ナオの好きな『彼』」
「ッ……」
かぁっと、たちまち顔が熱くなる。
きっと真っ赤になっているであろう頬を押さえて、私は思わずニコを睨んでしまった。
だが、そんな私の視線に怯むこともなく、ニコはあっけらかんと顔を綻ばせる。
「あはは、やっぱり? もう、だったら最初からそう言えばいいのにさ」
「そ、そんなにはっきりと言わないでくれたまえ。『彼』、とか……」
「いいじゃん。だって、『彼』なんでしょ?」
「……ま、まぁ…… それは、そうなのだけれど……」
もごもごと、私は言葉を澱ませた。
確かに、ニコは私に好きな人がいることを知っている。
そして、それがあろうことか、同性であることも。
いやしかし、それはただ好きになった人が同性であったというだけで、同性だから好きになったというわけでは全く無い。そこだけは主張しておきたいところだし、ニコもそれは理解してくれた。してくれたはずだ。
だが、何故なのだろう。
自分以外の第三者の口から、『彼』と言われると…… 何やら、居たたまれないような気持ちになってくるのは。
「……………」
「まぁまぁ、お茶でも飲んで落ち着いてよ。そうか、お誕生日かぁ。それじゃ、何か贈り物したいよねぇ」
「う、うむ……」
促されるまま、私は温くなったミルクティーを啜った。
そうかそうかと、頷くニコ。
思えば、今まではこんな話を他人にしたことなんてなかった。ニコという古い友人と、再び出会うまでは。
果たしてこれは、良いことなのか、良くないことなのか……
世間知らずの私には、よくわからない。
だが、私にとって貴重な機会であることは確かだった。こんなことを相談出来るような相手は、ニコしかいない。
「で、それっていつなの? その人の誕生日って」
拭いたグラスをカウンターに置きながら、ニコが当然の問いを投げてくる。
だが、私はぐっと言葉に詰まった。
そこを聞かれると、痛い。そこは私自身、自分で自分を叱責したいところなのだから。
「……実は、もう過ぎている……」
ぼそりと、私は口を開いた。
ニコの目が、またぱちぱち瞬きをする。
「へ?」
「だから…… 過ぎてしまっているのだよ。そろそろではないかとは思っていたのだけれど、いつの間にか過ぎて……」
「うわぁ、そりゃマズイよナオちゃん。遅れちゃったけどって、早いとこ何か考えなきゃ」
「わ、わかっているとも。だから、こうして悩んでいるんじゃないか」
まったくもうと、呆れ顔で腰に手を当てるニコ。
私は、思わず目を逸らしてしまった。ずずと、紅茶を啜りつつ。
『彼』が、誕生日を迎えた。
それを知ったのは、つい昨日のこと。
アヤセと共に遊びに来てくれたチャコールが、教えてくれたのだ。一体、どこをどうやって調べたのやら…… さすがは情報屋さん、というところだろうか。
『何かするなら、早くした方がいいぜぇ?』
そう言って、ニヤニヤ笑っていたチャコール。その時の恥ずかしさを、また思い出してしまう。
だけど。
過ぎてしまったとは言え、それを教えてもらえたことに、私は心から感謝しなければならないだろう。
彼の、誕生日。
私の敬愛する友、鈴影医師。
あの優しげな笑顔を思い浮かべるだけで、耳に染み通るあの声を思い出すだけで…… 私の胸は、小さく跳ねる。
丸い眼鏡越しに私を見る、彼の金色の目。
でも、私の姿を映しているのはその眼鏡だけ。彼の瞳に私など映っていないことは、私も、わかってはいるけれど。
でも。
それでも彼は、私を友として扱ってくれる。
私が彼を友と思うことを、許してくれている。……たぶん。
この胸の弾むような想いはさておいても、私にとって、彼は大切な、大切な…… 愛すべき、友なのだ。
だから、彼が生まれ来てくれた日を、私も祝いたい。
生まれて来てくれて、ありがとう。
そんな気持ちを、伝えたい。
口に出して伝えるのは、司祭である私にとってはむしろ簡単なことかもしれない。だけれど、何故か…… それを言葉として伝えるのは、今の彼には、酷なような気がするから。
だから、せめて、贈り物で。
私の気持ちを伝えられるような。そして勿論、彼に喜んでもらえるような。そんな贈り物を、したいと思っているのだけれど……
「……一体、どんなものを贈ったらいいのだろうか……」
もはや見栄を張る余裕もなく、私は呟く。
「子供ならともかく…… 相手は、立派な大人だからね。変な物を贈っては、逆に失礼になるかもしれない…… かと言って、司祭である私が高価な物を贈るというのもね。立場上、あまり良いことでは……」
冷めた紅茶に浮かぶ、白茶色の波紋。その向こうで、ニコが拭いたグラスを置くのが見える。
ううんと、ニコは小さく呻った。
そして、また次のグラスを取り上げると、白い布巾でキュッキュッと拭き始める。
「大人、か。確かその『彼』って、ナオよりも年上なんだったよね」
「うん……」
「立派な職業の人なんだっけ? どんな職業かって教えてもらえたら、もうちょっとアドバイスしやすいんだけどなぁ」
「そ…… それは、出来るわけないだろう。そこを教えてしまったら、誰かわかってしまう…… かもしれないじゃないか」
またかぁっとする頬を押さえて、私は言葉を澱ませる。
ニコには、相手が鈴影医師であることは教えていない。いや、さすがにそこは教えられるものか。
えー、そうなの? と、空々しく苦笑してみせるニコ。
こんなとぼけたように見えて、意外と誘導尋問の上手い男だ。これ以上口車に乗せられてたまるものか。
だが、しかし…… 今は、心からニコに助言を求めたい状況であるのも、事実。
複雑な思いをごくりと飲み下して、私はカップを皿に置く。
「とにかく、彼は立派な大人の男性なのだよ。さりげないけれど、いつも質の良い小物を身に付けているような…… 時々、何か香水のような香りもする、ような……」
「ふぅん、なるほどね。何かその人、女の子にモテそうな感じするなぁ」
「うん、かなり女性に人気があるようだよ。何しろ立派な紳士だし、とても優しいからね。特に、女性には……」
説明しながら、私は何だか沈んだ気持ちになってきた。ずーん、と。
そう。
彼は、本当に女性に『モテる』人だ。
付き合っている女性は、常時複数いるという話も聞く。どうやら本命の相手というのはまだいないようだが、それだけ沢山の女性との縁があるならば、ただ一人に絞る必要などないだろう。司祭としては、正座させて数時間お説教したいところではあるけれど。
しかし…… ああ。
本当に、私はなんて身の程知らずに想いを抱いてしまったのだろうか。世間知らずにも程がある。
これでは、彼にとっては迷惑以外の何物でもあるまい。
むしろ、知らぬフリして友人として接してくれている彼の優しさに、惚れ直してしまいそうなくらいで……
「ま、まぁ、ナオちゃん。元気出して、ね?」
私から暗いオーラが出始めたのが見えたのだろうか。ニコは取り繕うように笑うと、保温していた紅茶ポットを差し出して来た。
「ほら、お代わりあげるからさ。んー…… しかし、素敵な人を好きになったんだねぇ、ナオは。それって、ちょっと誇っていいことだと思うよ?」
「……何を、だい?」
「だから、ナオがその人を好きになったことをさ。好きになった人を素敵だって思えるのって幸せだし、それが誰が見ても素敵な人だったら、自分GJって感じしない?」
「………ニコ……」
注がれる紅茶から、私は顔を上げる。
だいぶ薄くなった湯気の向こうで、ニコは変わらずに顔を綻ばせていた。 『でしょ?』と、悪戯っぽい目をして。
私の旧友、ニコラス。
たった独りでこのカフェを切り盛りしている、彼。
彼の手には、指輪があった。まだそれほど古くなってはいない、銀色の指輪。
その指は、左手の薬指。
だけれど、対になる指輪の持ち主は、今はもう彼の隣にはいない。
彼の奥方は、数年前に亡くなったという。
昔、私もその女性に会ったことがある。もちろん、将来ニコの大切な人になるなどということは、全く思ってもいなかったけれど。
彼女は…… 素朴だけれど愛らしい、優しい心の少女だった。
そのあどけない微笑みは、人の心を暖かくする慈愛に満ちていた。
今になれば、少し思う。
ニコが恋に落ちたのも、わからなくはないのかな、と。
その頃の私は、そんなニコの気持ちを最後まで理解することはなかったけれど……
「だから、自信持って贈り物選べばいいんじゃない? ナオがその人の為に贈りたいものを、さ」
最後のグラスを手に取り、ニコはそれを丁寧に拭きはじめた。
キュッキュッと、良い音がする。
快いその音色に、懐かしいその声が乗せられていく。
「誰だってさ、人に何かもらったらとりあえずありがとうって言うでしょ? 本当に気に入ってもらえたのかなんて、その人じゃなきゃわからないじゃない」
「…………」
「だからさ…… ナオがそれを彼に贈って、良かったなって思えるか。ありがとうって言ってもらえたら、嬉しいって思えるかどうか。それでいいんじゃないかなぁ」
ね? と、小首を傾げるニコ。
その仕草は、まるで子供を諭すようで。私は、少し腹立たしいような気分になった。
何て、自己中心的な考えだろう。
彼の言葉をそのままに取れば、ただの自己満足のようにも聞こえてしまう。
だけれど。
ニコはきっと、そうやって大切な人に贈り物をしてきたのだろう。
自分に自信を持って。
自分の想いに、誇りを持って。
大切な人を想い、そうして差し出された贈り物は、きっと、彼女の心に深く届いたに違いない。
例えそれが、高価な薔薇ではなく、ささやかな野花の花束であったとしても。
「………………」
指輪をした手が、カップにミルクを注いでくれる。
その柔らかな渦巻き模様を眺めながら、私は、自分の想いに少し向き合ってみた。
彼は、敬愛すべき友。
この想いは確かに恋心かもしれないけれど、だからと言って、気取る必要などあるのだろうか。
見返りなんて、求めるつもりはない。
ただ、この想いが少しでも伝わればいいと…… そう、願うだけ。
生まれてきてくれて、ありがとう。
君に出会えたことは、君と友達になれたことは、私にとって、とても幸せなことなのだから。
私の想いを、彼に。
そう、伝わらなくたって良いんだ。
ただ彼へと届けたい。心を込めた贈り物と共に。
そう考えると…… あんなに迷っていた自分が、まるで嘘だったように思えた。
胸に痞えていたものが、すぅっと溶けていく感覚。
そうだ、きっと見つかるだろう。
私が心を込めた、彼への贈り物。
そのイメージは、もう私の中にあるような気がする。だから……
「………………」
どこからか、時計の鐘が聞こえてきた。
少し古風なその音色は、壁の時計から響いてきたのだろう。この優しい雰囲気のカフェに、よく合っている気がした。
鳴る鐘の数は、11。
グラスを拭く手を止め、ニコが時計を見上げる。
「あ、もうこんな時間。引き留めてごめんな、ナオ。すっかり遅くなっちゃったね」
最後のグラスを拭き終え、ニコはそれをことりと置いた。
それらを全てまたトレイに乗せ、大事そうに戸棚の中へと収める。
「ナオちゃん、危ないから泊まっていきなよ。この辺り物騒らしいじゃない? 布団は干したてのヤツがあるからさ」
「あ、うん…… では、そうさせてもらおうかな」
まだ夢を見ていたような気分で、私はティーカップに口を付ける。
食器を片付け終わったニコは、カウンターの向こうからフロアの方へと出て来た。
小さな店内を点検するように見回し、窓のカーテンをしっかりと閉ざす。
その頬には、ほんのりと微笑みが浮かんでいた。
まるで愛しいものを見守るような、優しい微笑み。
ニコにとってこの『Cafe Canonicate』は、きっと我が子も同然なのだろう。
来る度に私好みになっていく、旧友のカフェ。
揺れるオルフの尻尾を眺めながら、私は、残りの紅茶をゆっくりと楽しむ。
「……………」
ふと。
紅茶で温められた胸が、キリリと、痛くなった。
親身になって私の話を聞いてくれた、旧友。
顔は変わらずヘラヘラと笑っているけれど、もしかしたら…… 彼にとっては、淋しさを呼び覚ましてしまう話題だったかもしれないのに。
胸に下げた十字架を、私はそっと握りしめる。
そして、躊躇いの気持ちを何とか振り払うと、椅子ごと振り返った。
「……ニコ。あのね……」
「ん?」
最後に戸締まりを確認して、ニコは振り返る。
変わらない、明るい笑顔の友。
気恥ずかしいような気持ちを懸命に押し止めながら、私は、そっと目を細めた。
「さっきは、すまなかった。遅くなってしまったけれど…… 誕生日おめでとう、ニコ」
「………………」
それはきっと、苦笑のような微笑み。
司祭とも思えないような、ぎこちないもの。自分でも、それはよくわかった。
だけど。
だけど、私の目の前で、ニコは…… 私の旧友は、その顔に満面の笑みを浮かべていく。
「ありがと。ナオ」
白い歯をニッと見せて、ニコは言った。
最後に位置のずれた椅子を戻し、私の方へ戻って来ると、彼は馴れ馴れしく私の肩に手を掛ける。
「じゃ、今夜は朝まで付き合ってもらっちゃおうかなー。美味しいワイン仕入れてあるんだ。プレゼント代わりってことで、ね?」
「う、うむ、お酒に付き合うのは構わないけれど…… 朝までは勘弁してくれたまえ。私は司祭なのだからね」
「もう、そういうお堅いトコ変わってないなぁ。オール出来るくらいお酒鍛えておかないと、大人の『彼』にお付き合い出来ないよー?」
「う、煩い…… と言うか顔が近いよ君、気持ちが悪い。さっさと離してくれたまえ」
ぷいっと顔を背ける私を、からからと笑うニコ。
友人という自覚すらなかった昔からは、想像も出来ないような…… 心休まる、楽しい時間。
美味しいワインをいただきながら、その夜、私たちは眠るまでお喋りに花を咲かせた。
明日になったら、彼への贈り物を作ろう。
そして、彼の診療所へ、届けに行こう。
そんな胸弾む想いを抱きながらの葡萄酒は、司祭にあるまじきことだけれど、甘くてとても美味しかった。
もしも二日酔いになったら、彼にこっそり薬を処方してもらおうかな。
心地良い眠りに落ちる頃には、そんなことまで考え始めていた。
■ 先月9月1日、DollyShadow組に新しいキャラが降臨しました。
オルフ、『ニコラス(ニコ)』です。
ニコ本人も仰々しい名前だと思っているみたいなので、ぜひ気楽に『ニコ』って呼んでやって下さい^^
「真夏のウォームと、懐かしい声」っていう小話の最後にちょっと登場した人です。
→ その記事へ
オルフ、格好いいですね~^^*
実は、ニコは最初はビズーになる予定でした。なので、リアイベ用に作ったうちの子設定本にはビズーって書いてあったりします。
でも、リアイベでオルフに一目惚れしまして……
ワイルドで凶暴な感じに見えて、動き方とか普段の表情はけっこう優しげですよね、オルフって。だから、穏やかなニコにも合うかなーと。
それに、ニコはツンツン髪という設定が最初からあったので、オルフの毛並みの感じがぴったりだなって^^
そういうわけで、ちょっと冴えない感じのオルフ『ニコ』が降臨したのでした。
「それで、何を贈り物にしたの?」
「う、うむ。教会の庭で育てた桔梗を、花束にしてね…… 部屋に、飾ってくれたそうでね……///」
「へぇ、そうなんだ。良かったね、ナオ」
ニコは、『Cafe Canonicate(カノニカート)』というカフェを一人でやってます。
住宅地にある小さなカフェで、そば粉のガレットとクレープが名物のお店です。
『Canonicate』はイタリア語で、聖職者関連の単語なのですが、俗語的な意味で「楽な仕事・割の良い仕事」等の意味でも使われるようです。(なので、クゼさんは「……それは嫌味かい?」ってちょっと複雑そうな顔をしています)
場所は、クゼさんの教会の近くです。
ニコひとりでやっている小さなお店ですが、味には自信があるそうですので、お近くへお越しの際はぜひどうぞ^^
クレープはテイクアウトも出来るそうですよ。
「ちょっとナオちゃん、重いんですけどー」
「む…… 重いとは失礼だよ、ニコ」
何かオルフの背中が乗り心地良さそうだったので、ウォームを乗せてみたの図(笑)
クゼさんとニコは、修道院時代の古いお友だちです。
とは言っても、二人が一緒にいたのは一年弱くらいの短い間でしたが…… クゼさんにとって、ニコはとても印象深い存在だったようです。
どうやら、ニコにとってもそうだった様子。
最愛の奥さんを若くして亡くしたニコは、念願だったカフェを開く為に、クゼさんの教会の近くにやってきました。
そして、ある程度軌道に乗ったら挨拶に行こうと思っていた矢先、真夏の公園でぐったりしているクゼさんを見つけたようです。(以前の小話)
クゼさんにとっては、良い相談相手が出来たって感じですね^^
普通にお泊まり出来るくらい仲良しの二人ですが、この二人に関してはBL色は一切無く、至って普通のお友だちのようです。
そういう、BL抜きのお友だち同士も好きでして^^*
ニコとクゼさんが過した修道院時代の話も考えているので、書けたらUPしたいなーと思っています。
新キャラのニコも、どうぞよろしくお願いしますー!
「……うー…… コール…にぃ……」
「……zzz……」
話変わって、チャコールが1000日を迎えていました!
何か、もう1000日かーって気分と、まだ1000日?って気分と、両方です。
本当に、チャコールがいない間アヤセはどうしてたのでしょ。今となっては考えられません(笑)
ともかく1000日おめでとうチャコール!
お祝いのプレゼントは、当然のようにアヤセにゃんで^^*
また改めてお祝い記事書けたらいいなーと思ってます。もちろん小話付きで。
うぅ、書きたい話は沢山あるのに、なかなか追いつきません……