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ある夜の海里、と…… [小説 : Dolly Shadow]






■ 海里の別邸での、ささやかな小話です。
「続・今後あるかもしれない予告編」の時間軸です。
BL要素少々含みます。念の為にBL苦手な方はご注意下さい。


  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「……ナオトさん」
 障子の向こうへ、海里はそっと呼びかける。
 青い月明りが降る、真夜中の和風庭園。石塔の影が敷石の道に横たわり、一面に敷かれた白石が月光に淡く輝いている。
 美しい庭園を眺めながら、海里は縁側に腰を下ろしていた。
 流水模様の紺地の浴衣に、黒の羽織。
 草履を履いた片足は、踏み台の上に。素足の片脚は、縁側の縁に立て膝をして。
 突いた後ろ手に寄りかかり、海里は背後を振り返った。
 ぼんやりと灯りが滲む、白い障子。
 その向こうには、息を潜めている人がいる。まるで、嵐が過ぎ去るのを待っているかのよう。
「起きていらっしゃるのでしょう? ナオトさん」
 くすくすと笑いながら、海里は障子の向こうへ囁いた。
 返事は、ない。
 障子に滲む灯りが、僅かに揺らいだ。灯りを消そうとしたのかもしれない。
 今更、何を。
 海里は、ますますくすくすと微笑んだ。
 笑い声は、障子の向こうにも届いている。あの雪のように白い頬が、かぁっと薄紅に染まっているのだろう。
 そして、咎めるように障子を睨め付ける、あの若草の色をした瞳……
 何て、愉快。
 そんな虜を想像するだけで、愉しみが込み上げて止まらない。
 まるで子供のように、海里は身を揺すった。
 庭園を抜ける夜風に、南天の枝がさやさやと揺れる。
 寝ぼけた鯉が飛び跳ねる音がする。
「良い月夜ですよ。そんな暗いところに閉じこもっていないで、出ていらっしゃい」
 優しく、海里は囁く。
 幼子を甘やかすように。低いバリトンの余韻が、甘く糸を引くかのように。
「一緒に庭園を散歩しましょう。ほら、とても綺麗ですよ。白い玉石がこんなにキラキラして…… きっと、ナオトさんも気に入っていただけますよ」
 障子の向こうは、応えない。
 立て膝を肘置きにして、海里はくいと眼鏡を押し上げる。
「閉じこもっているのは気が滅入ると、前に仰っていたではありませんか。ですから、せめて夜の散歩を…… ねぇ、ナオトさん」
 障子の向こうは、応えない。
「もうお休みになってしまいましたか? それとも…… もう、お外に出たい気はなくなってしまいましたか」
 障子の向こうは、応えない。
「おや、そうですか…… では、もっと屋敷の奥にお部屋を移して差し上げましょうか。余計な窓もなく、僕以外の者は誰も入れない…… 陽の眩しさや風音に悩まされるもこともなく、ゆっくりとお過ごしいただけるでしょう。フフッ……」
 かたり。
 僅かな物音が上がる。
 堪えきれず、海里は失笑した。くつくつと、ムシチョウの尾羽を揺らしながら。
「フッ、フフフ……」
 物言わぬ障子を見遣り、海里はにぃと目を細めた。
 細い黒縁眼鏡に、月明りが青白く反射する。
「 冗談ですよ。ナオトさん」
 くいと、それを押し上げる指。
 その手の陰で、形の良い唇が邪に歪む。
「ですが、それも悪くは無いかもしれませんね?」
 障子に映る灯りが、大きく揺らめいた。
 衣擦れが聞こえる。ほんの微かな、息を飲むような気配と共に。
「…………」
 立て膝を下ろし、海里は羽織の紐をするりと解いた。
 乱れた襟を正し、房の付いた紐を綺麗に結び直す。つい今までのくつろいだ様子など、どこにもなかったかのように。
「……良い月夜ですよ、ナオトさん」
 障子の向こうへ、海里はそっと囁いた。
 もう何度も何度も繰り返された、優しい誘いを。
「一緒に、庭園を歩きましょう。僕は、いつまでも待っています。その気になったら、出ていらっしゃい」
 そして、海里は口を閉ざす。
 縁台に腰掛け、踏み台に置いた草履に両足を入れて。隣に置かれたもうひと組の草履を、時折ちらと見遣りながら。
 塀に囲まれた和風庭園を、青白い月が照らしていた。
 都会のネオンも、車のクラクションも、ここには届かない。ただ、涼やかな風が吹き抜け、時折池から水音が響くだけ。
 夜空の月を眺めながら、海里は縁台に腰掛けていた。
 もう、何も言わない。
 次第に夜風は止み、枝葉のざわめきもやがて聞こえなくなっていく。
 かたりと、障子の向こうから物音がした。
 そして、畳の上を浴衣の裾が滑る音。滲んでいた灯りが消え、そして、静かに障子が開かれる。
「……………」
 海里は、振り返った。
 桜色の髪の人が、立っている。どこか心細げに、羽織の襟に手を添えながら。
「……これで…… 君は、満足かい?」
 伏し目がちの目を僅かに逸らして、その人は言った。
 消え入りそうな、小さな声で。
 にこりと、海里は優しく微笑んだ。
 そして、そっと手を差し出す。まるで花霞のような、その人へ。
「さぁ、参りましょう。ナオトさん」
「……………」
 微かに顰められる、その細い眉。
 ほっそりとした白い手が、おずおずと、海里の手に重ねられた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  
 
■ 今後あるかもしれない、海里がクゼさんを拉致しちゃう時間軸の話でした。
どうしてこれを書いたのかというと…… 誰かの小話でもちょこっと書こうと思ってダイスを振って決めたところ、海里の話を書くことになったもので。
海里とは…… 一番難しそうなところ来た……(`・ω・´;)
そういえば、前にそうやって決めた時も海里で悩んだような気がします。プライベートが想像しにくい子なんですよね。常に変態紳士なイメージだから。
なので、今回も変態紳士な話にしてみました。
何て言うことのない話です。ただ海里がクゼさんを夜の散歩に誘うだけの話。
でも、海里はシチュエーション萌えなので、強制するよりも何かこう自分から誘いに乗らせるのが楽しいらしいです。
とりあえず、クゼさんには頑張って耐えていただきたいものです……


■ 話変わって、ハロウィンイベントの真っ只中ですね^^
コウモリさんがいっぱい来て、ご飯食べさせるのも大変な感じですが、コウモリさん自体は可愛いです。
この子アイテムにしてくれれば嬉しかったのになぁ。
パークのオオコウモリさんには、一度も動いてる時に出会えていません。
アイテムも特に欲しい物はないので、既に諦めモードですが…… 一度くらいは起きてるところ見てみたいなぁ。
オレンジコウモリは倒しやすいそうなので、一匹くらい倒してみたいものです。



「ご飯を横取りしなければ、使い魔にしたいところなのですが……」


フサムシをぱくりと取られて、ちょっと「むぅ…」なバンリさん。
魔法使いの使い魔にコウモリはぴったりですからね。ちょっと飼いたいなぁとは思うものの、ご飯代を考えると……
まぁ、バンリさんにはシロムシクイの使い魔マギィがいますからね。
早く飼い主さんのところに帰りなさいと、そっと追い出しの呪文をかけるバンリさんなのでした。
もうアイテムは充分もらいましたし……^^;


■ 私事ですが、ちょっと風邪を引きました。
最近どこでも流行っているみたいですね。自衛はしていたつもりなのですが、敵わなかったらしく……
しばらく無理はせず、大人しくしようと思います。
皆様もどうぞ風邪にお気を付け下さいね。既にお風邪の方は、早く良くなりますように。





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